抄録
水田から発生するユスリカは種類, 数ともに大きく, 稲の発芽に被害を与えるものもある。にもかかわらず研究は少ない。本研究は1977年から1979年にかけて, 鴻巣市の農事試験場の, 1926年以来施肥料を違えて稲作を行っている4水田区でのユスリカ発生を調査した。堆肥区で1シーズン1m^2当たり1,765匹発生し, 化学肥料区では1,376匹で, 無肥料区, 緑肥区では約半数発生した。4区からユスリカ15種が発生し, なかんずくC. kiensis, Tanytarsus sp., Microtendipes sp., Procladius crassinervisの順に多かった。シンプソンの多様性指数は, 田植直後に小さく秋季に大きくなる傾向を示した。散布された除草剤, 殺虫剤, 殺菌剤ともにユスリカ発生数に顕著な影響を与えず, 中干しによって7月下旬から8月上旬にほとんど零になった。15種の水質, 土壌の特性とユスリカ発生数, 幼虫現存数との順位相関を調べたところ, β-glucosidaseが良い相関を示し, これはユスリカ幼虫の食物供給の活性と見なされる。反対に稲葉面積, リンイオン濃度とは負の相関を示した。