1981 年 32 巻 4 号 p. 293-299
マレー糸状虫に対する実験室内飼育蚊の感受性の有無について検討を行った。用いた蚊の種類と系統数はAedes aegypti 4系統, Aedes togoi 2系統, Armigeres subalbatus 2系統およびAnopheles stephensi 1系統の4種類9系統である。感受性の有無は宿主効率(9病日の平均III期幼虫数/吸血直後の平均Mf取込み数)で表した。マレー糸状虫感染猫を各系統に夜間吸血させた結果, Ae. aegyptiのLiverpoolとRed-eye I系統では宿主効率が前者0.24∿0.45,後者0.10∿0.34で感受性を示し, Black-eyeとRed-eye II系統では宿主効率が0∿0.03で非感受性であった。Ae. togoiのNagasakiとRendaiji系統はともに感受性があるが, ミクロフィラリア(Mf)の取込み数が個体間でばらつきが大きく, 宿主効率(0.12∿0.88)は各実験間に大きな差が観察された。Ar. subalbatusの406とRendaiji系統, An. stephensiは非感受性であった。吸血後24時間における胸筋内平均幼虫数の吸血直後の平均Mf取込み数に対する比を幼虫移行率として表したが, Ae. aegyptiの感受性系統と非感受性系統との幼虫移行率に有意な差が認められ, 全体として幼虫移行率は感受性系統が高く, 非感受性系統が低い傾向を示した。また感受性のある蚊の種間でも幼虫移行率に差がある傾向を認めた。一方, 蚊の感受性を左右する一つの要因として, Ar. subalbatusでは幼虫のキチン化がその初期の発育段階で重要な役割を果たしていることが確認された。