衛生動物
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ウマブユ (Simulium takahasii) の交尾, 吸血および産卵に関する室内観察
高岡 宏行
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1985 年 36 巻 3 号 p. 211-217

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抄録

ブユの室内累代飼育は, 蛹から羽化した成虫に交尾および吸血行動を起させることの困難さから欧米産の2,3のブユ種を除いて成功していない。今回, 本邦産のウマブユ(Simulium takahasii)について室内飼育の可能性を探る目的で室内観察を行った。本種は, 羽化後すぐ, ポリエチレン袋やポリスチレン小試験管内で容易に交尾する, いわゆる狭所交尾性を有することがわかった。交尾は日中どの時刻に羽化した雌雄にも認められ, 交尾率および受精率は, 小試験管に雌雄各1個体を入れた場合は, 100%と高率であった。また1個体の雄は2∿4個体の雌を連続して受精せしめることもわかった。羽化当日, 11∿34個体の受精雌をポリエチレン袋に入れ, 約30分間人の手を与えたところ, 14.3% (13/91)が吸血した。未受精雌は18.2% (2/11)が吸血した。また, 16個体の受精雌に約30分間ウサギの耳を与えたところ6個体(37.5%)に吸血が認められた。吸血後2日目から, 水を3分の1ほど入れた試験管に成虫を移し毎日産卵の機会を与えた結果, 途中死亡した雌を除いてすべての受精雌(11個体)が吸血後3∿4日目に産卵した。2個体の未受精雌は体内に卵の成熟は認められたが産卵しなかった。産卵数は, 人およびウサギを吸血したブユで異なり, おのおの1個体の雌当り平均158と195であった。産下された卵のうち, 一カ所にまとめて産み付けられた8個の卵塊をおのおの水中に放置したところ, 産卵後5∿12日目に80.9∿97.9%(38.3%の1例を除く)の卵が孵化した。このように, 室内で困難とされている交尾・吸血, および産卵が容易に認められたことから, 本邦産ウマブユは室内累代飼育に好適なブユ種と思われ, 今後が期待される。

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© 1985 日本衛生動物学会
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