衛生動物
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化学療法に耐過したるミクロフィラリアの蚊体内発育に就て
久米 清治大石 勇中沢 浩三
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1954 年 4 巻 supple 号 p. 54-60

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抄録

糸状虫症の化学療法は近年頓に進展し, アンチモン(以下, Sbと略記)剤, ピペラヂン誘導体, シアニン色素剤, 砒素剤, 等の殺虫効果が認められて居る.これらの中, シアニン色素剤は, その毒性などの関係から, 実用化されて居らぬが, 他の三者は夫々の特色があり, 各種の人畜糸状虫に就て行われた報告, 並に著者の犬糸状虫Dirofilari aimmitisに於ける実験成績を総括すると, Sb剤及びピペラヂン誘導体にはミクロフィラリア(以下, m.f.と略記)に対する顕著な駆除作用があり, 砒素剤には卓越した成虫殺滅作用が認められる.而して, Sb剤及びピペラヂン誘導体の使用に際してもm.f.の完全消失を見ない場合が屡々あり, 砒素剤はm.f.に対して殆んど無影響であることを知る.以上の如く, m.f.に無効なる砒素剤はもとより, m.f.に有効なるSb剤或はピペラヂン誘導体の使用に際しても, これらの化学療法に耐過したるm.f.が中間宿主体内で発育し得るか否かを確かめることは, 糸状虫症に対する化学療法の終局の一つを見究める意味と, 糸状虫の伝搬に関する考察を行う上に重要であるので, 犬糸状虫に就て行つた実験の概要を述べる次第であり, 他種糸状虫の場合の参考ともなれば幸である.

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© 1954 日本衛生動物学会
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