抄録
ヒトスジシマカは犬糸状虫に対する感受性を有し, 野外でもこの疾病の伝搬者として働いているとされている。しかし, 長崎系のヒトスジシマカにミクロフィラリア密度を変えた犬の血液を与え, 25℃に置いて14日間吸血蚊の生存状況と死亡個体に含まれる犬糸状虫幼虫の数を調べたところ, ヒトスジシマカの生存率はミクロフィラリア密度が高くなるに従い低くなった。とくに吸血後3日間の死亡率に著しい差がみられた。また, 犬糸状虫が感染幼虫となる14日後までヒトスジシマカが生存するには, 初期のミクロフィラリアの摂取数が20隻以下でないと可能性が低いと考えられる。このことはヒトスジシマカが犬糸状虫の動態に果たしている役割を小さくしている一つの要因になっていると思われる。