衛生動物
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ネパールの衛生上重要なクロバエ
倉橋 弘V. K. THAPA
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1994 年 45 巻 Supplement 号 p. 179-252

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抄録

1990年と1992年にネパールで行われた東京医科歯科大学による文部省海外学術調査の際, 調査隊メンバーにより採集された標本を中心に, さらに九州大学, 北海道大学, ルンド大学博物館, ビショップ博物館所蔵の資料も加えてネパール産クロバエ科双翅目昆虫の分類学的研究を行った.ネパールのクロバエ科は合計23属77種となった.このうち, 10種は新種, 42種がネパール新記録であった.採集された標本に基づいてネパール産77種の検索表を作製した.コクロバエ属Melindaの1種は同定未了として残った.新種はCalliphora himalayana sp. nov., Nepalonesia pulchokii gen. nov., sp. nov., N. shinonagai gen. nov., sp. nov., Onesia girii sp. nov., Melinda nepalica sp. nov., M. sugiyamai sp. nov., Cosmina nepalica sp. nov., Isomyia hetauda sp. nov., I. shelpa sp. nov., I. singhi sp. nov.であり, Nepalonesia属はその雄の特徴的な第5腹板などによりOnesia属に近縁な新属として設立された.ネパールのクロバエ相は東洋区系要素が40%をしめ, 東洋区・オーストラリア区(一部, 東旧北区から東洋区オーストラリア区に広く分布するものも含め)要素が13%と東洋区の色彩が濃いことと, 固有種が占める割合が26%と高いことが特徴である.シノ・ヒマラヤ要素は9%を占め, 低地の東洋区系要素と高山帯の旧北区系要素に挟まれた山地帯に分布していることが判った.ホホアカクロバエ, ミヤマクロバエ, ヒツジキンバエ, オビキンバエなど世界共通種や氾熱帯・亜熱帯種も分布が確認されたことは医学上又は獣医学上重要である.

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© 1994 日本衛生動物学会
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