今日まで, 世界各地からイエバエを採集して, 各種の殺虫剤に対する感受性について調査を行なってきた.しかし, いずれの場合も実験室に持ち帰り, 一度, 飼育して増殖した個体群を用いたものであった.今回は, 薬剤感受性の程度を現地で.迅速且つ簡便に実験出来る方法を知る事を目的とし実験を行なった.実験方法は, 迅速且つ簡便に実験出来る方法を知る事を目的とし実験を行なった.実験方法は, 準備が容易な濾紙接触法により, 速効性や残効性を調べた.実験に用いたイエバエは, インドのアラハバード市内と周辺の地域の4か所で採集した個体群である.実験に使用した殺虫剤は, malathion, fenitrothion, permethrin, fenothrinおよびpropoxorの5種類である.実験の結果, 継続接触法では, permethrinとfenothrinが優れた速効性を示し, propoxor>fenitrothion>malathionの順に感受性が低下した.また, 採集地別の感受性は, 速効性のある殺虫剤において, その差が大きい傾向が強かった.短時間接触法の結果について見ると, fenothrinの効果が高かった.Katra (市内)で採集したイエバエは, fenitrothion, permethrinおよびpropoxorに対する感受性が郊外のPhaphamauで採集したものよりも低く, 感受性に差異が認められた.残効性については, permethrinとfenothrinともに優れていた.Permethrinについては, 処理直後のKT_50値が8分45秒に対し30日後の処理面で6分21秒と低下は認められなかった.しかし, propoxorは, permethrinやfenothrinに比較して遅効性で, 残効性も低下しやすい傾向が認められた.以上の結果から, この実験の範囲では, 濾紙接触法は, 現地で迅速に状況を知る方法として, 実用性が高いといえる.なお, malathionに対する感受性は, 日本産イエバエでは見られない, 高い感受性であった.また, pyrethroid剤が, propoxorよりも高い残効性をしめした事は興味ぶかい点である.このほか, 今回の実験で, イエバエとフタスジイエバエの感受性に差異が無い事がわかった.
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