2001 年 52 巻 1 号 p. 23-30
トレハラーゼの特異的阻害剤バリドキシルアミンA(VAA)をワモンゴキブリに注射すると(50μg/虫), 卵巣中の卵発育抑制と卵の退化が見られ, 卵鞘が形成されなかった。卵巣や生殖付属腺, 脂肪体のトレハラーゼ活性はVAAの注射により7日以上強く阻害された。トレハラーゼ阻害による体組織でのトレハロース利用阻害のために, 体液中のトレハロース濃度は著しく上昇し, 他の体液成分濃度にも変化が見られた。電気泳動による体液中卵黄前駆蛋白ビテロジェニン(Vg), 卵巣中卵黄蛋白ビテリンの変化の観察から, VAA投与が脂肪体でのVg合成, 卵巣へのその取り込みを抑制することが明らかになり, これらが卵巣発育阻害の原因であると考えられた。