ユスリカ科の昆虫にはその地理的分布や発生源の環境に応じて極めて多くの種類が見出される。日本産のユスリカについては, 主として徳永雅明が1932年から1965年にかけて, 当時の日本のほぼ全土にわたり採集された約160種を記録した。我々も1977年から今日に至る約20年あまりの期間に, 日本全土, および近隣諸国にわたり, 広範な地域でユスリカの採集とその分類を行い, その中, 現在の日本領土だけからでも, 佐々, 菊池(1985)のモノグラフ(333頁)において757種類を記録し, その中535種は日本特産の新種で, 131種のみが諸外国ですでに記録されているものと同種と判断されている。さらに佐々(1998)の二冊目のモノグラフ(156頁)においては新たに176種, 15属が日本産ユスリカ科として追加された。今回の報告は, その後1997年9月から2000年8月にかけて出版されたいろいろな学術雑誌に掲載された20の文献に新たに記載された日本産ユスリカ科の種類を, 分類学的な系列に整理したものである。これらは全部で241種に及び, その結果, 日本産ユスリカの記録は1,174種に及んだ。このリストは今後のユスリカ科の分類学的研究には欠くべからざる資料である。これまで佐々, および共同研究者が, 日本とその周辺諸国で採集し, 種の記載に使用したユスリカ科のスライド封入標本は, 2000年8月末に茨城県つくば市の国立環境研究所に保管をお願いし, それに伴う文献とともに, 国内および外国よりの来訪の研究者に公開して利用していただけるよう, 配慮した。
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