抄録
マレーシア,インドネシア各地で採集したギンモンカ属(Topomyia)の蚊幼虫を個別飼育により得た一連の標本(成虫と蛹・幼虫の脱皮殻)を検索中,外部形態は既知種,To. auriceps Brug, 1939の雌,幼虫,蛹と酷似し,同定は困難であるが,雄の生殖器の形態(gonostylus)が明らかに異なる種を発見したので,新種,Topomyia (Suaymyia) pseudoauriceps と命名し,各ステージの形態を詳細に記載し,両種の形態を比較した.両種の幼虫はクワズイモ(Taro),野性のバナナ,Pandanus sp., Heliconia sp. などの植物の葉腋の水溜りに生息する.To. auriceps はインドネシア,マレーシアに広く分布する普通種であるが,To. pseudoauriceps はサラワクの人里はなれた森林で,まれに採集される.なお,両種の幼虫は捕食性で,各葉腋に単独で生息する.