衛生動物
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原著
マンソン住血吸虫症媒介中間宿主貝Biomphalaria glabrata cDNA由来フォスファーゲンキナーゼの分子生物学的研究
吾妻 健福永 佐枝Blanca R. JARILLA長瀧 充徳弘 慎治Jing-Ying XIAOKangjam R. DEVI野村 晴香嶋田 雅暁宇田 幸司鈴木 知彦
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2011 年 62 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
フォスファーゲンキナーゼ(PK)は,生体内でのエネルギー産生や消費に関する触媒酵素で,Mg2+存在下でATPの高エネルギーリン酸基をグアニジノ化合物のグアニジノ基に可逆的に転移する酵素である.基質のグアニジノ化合物の違いによりPKは,クレアチンキナーゼ(CK)やアルギニンキナーゼ(AK)などの8種類に分類される.本研究では,B. glabrata (Say, 1818)のPK遺伝子について,cDNAの合成,RT-PCRによるcDNA断片の増幅産物のTAクローニング,cDNA塩基配列の決定,蛋白発現ベクターへのクローニング,リコンビナント蛋白の酵素活性測定を行い,酵素反応速度論のパラメーターをもとめた.また,B. glabrata PKの遺伝的類似性を調べるため,系統樹解析を行った.さらに本遺伝子のイントロンの数,位置,大きさを決定した.その結果,まず,cDNA配列は1,062 bpで,353アミノ酸をコードしていた.また,分子量は39,376 Da,等電点は6.12と算出された.系統樹解析結果より,B. glabrata PKは,他の軟体動物AKと同一クラスターを形成した.リコンビナント蛋白を作製し,酵素活性を測定したところ,L-アルギニンに特異的活性を示し,AKであると確定できた.酵素反応速度論のパラメーターであるKmArgは0.26±0.07 (mM), Vmaxは30.46±2.64 (μmolesPi/min/mg protein)であった.次に,マガキAKなどにおけるイントロンの位置と比較したところ,B. glabrataとはイントロン2から5までの4か所が完全に一致し,イントロン1は,存在しないことが明らかとなった.
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© 2011 日本衛生動物学会
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