抄録
越冬衛生害虫の駆除の1つとして, 蝿類の越冬蛹掘り(所謂かきとり)が実施されていることは御承知の通りであるが, この際の稍々詳細な昆虫学的な諸点や結果についてはあまり発表されていない.福田一男氏の手により調査発表された長崎県大村市内の農村に於ける, 3月下旬のものの記録は貴重な業績であるが, 私共も東京都内の材料によつて, この問題に1資料を提供しようと思う.勿論まだ結論的なものでは全くないが, 冬期の蛹掘りの意義が論ぜられている今日, 何等かの御参考になれば幸いである.冒頭に, この問題について終始含蓄ある示唆を与えられた小林晴治郎博士に敬意を表するものである.