日本組織適合性学会誌
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総説
ウシ主要組織適合遺伝子複合体(BoLA)の構造・機能・進化と疾患感受性
竹嶋 伸之輔間 陽子
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2007 年 14 巻 1 号 p. 9-22

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抄録

ウシはヒトの感染症と大変に類似した感染症を発症することから, 感染症のモデル動物としての可能性も指摘されている. ウシ主要組織適合抗原(BoLA)をはじめとした反芻動物のMHC領域はヒトやマウスと同様にクラスI, クラスIIおよびクラスIII領域が存在し, その領域を構成する遺伝子も保存されている. 一方でBoLA領域には興味深い特徴として, クラスIIがIIaとIIbの二つの領域に大きく分断されていることが挙げられる. クラスIIaにはDR, DQ等の古典的クラスII分子をコードする遺伝子が, IIbには非古典的クラスII分子やTAR, LMPといった細胞内での抗原提示機構を担う分子が集まっている. また, ウシクラスIIの特徴として, ヒトやマウスとは異なりDP分子が存在しないこと, および反芻動物に特異的に存在が認められるDY分子が存在する事などがある. このBoLAのアリル頻度はウシ品種ごとに大きく異なっていることを示し, さらにウシと他の動物種との比較した結果, BoLAは特に強い正の選択圧を受けていることが示唆された. BoLAと疾患との相関は様々な感染症において指摘されているが, 地方病性牛白血病および乳房炎については両者ともBoLA-DRB3およびDQA1のハプロタイプが疾患感受性とよく相関していることが見いだされた.

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© 2007 日本組織適合性学会
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