ブタのMHC(SLA)抗原型は, 合成ペプチドやワクチン接種による抗体産生能, 並びにメラノーマ(悪性黒色腫)の発症との相関が報告されており, さらにSLA領域周辺には, 背脂肪厚, 産子数などの各種の経済形質がマップされるという特徴がある. また, ブタは, 解剖学的・生理学的にヒトとの類似性が高く, 提供臓器不足の問題などから, ブタからヒトへの異種移植が注目されている. 本稿では, 最近ゲノム配列解読が完了したSLA領域の遺伝子構成と多型性などの特徴について紹介し, 臓器移植実験や抗病性を指標とした育種改良などへのSLA研究の応用の可能性について述べる.