クロスマッチ, HLA抗体検査は腎移植医療において不可欠な検査である. 移植前では, ドナーに対するHLA抗体(DSA:Donor Specific Antibody)の有無(そして量)を判定することで, 抗体関連型拒絶反応を引き起こすリスクの高い移植を回避することができ, また, 移植を決行する場合にはその準備(脱感作療法)も可能となる. 献腎移植は, 十分な術前検査が可能な生体腎移植とは状況が異なる. 日本でも公平, 公正な臓器配分システム(臓器移植ネットワーク)が構築されている. しかしながら, 移植医療が一般的に受け入れられている欧米に比べ日本では, 登録患者に対する検査, ドナー発生時の検査において様々な課題が残されている. また, 新規に産生されたHLA抗体, とくにDSAと慢性拒絶反応との関連は数多く報告されているが, 移植後のHLA抗体モニタリングの有用性については明らかにされていない.