日本組織適合性学会誌
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原著論文
次世代シークエンサーを用いたHLA-DRB1遺伝子の超高解像度DNAタイピング(Super high resolution Single molecule-Sequence Based Typing;SS-SBT)法の開発
尾崎 有紀鈴木 進悟吉川 枝里重成 敦子岡 晃光永 滋樹椎名 隆猪子 英俊
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2012 年 19 巻 2 号 p. 211-222

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抄録

著者らはHLAクラスI遺伝子であるHLA-A, -Bおよび-Cの全領域をそれぞれ特異的に増幅させるPCR, Roche GS Juniorを用いた次世代シークエンシング, 塩基配列の編集およびアリル判定までの一連の過程により, 8桁レベルの超高解像度DNAタイピング(Super high resolution Single molecule-Sequence Based Typing;SS-SBT)法を開発し, これについて報告した. 一方, クラスII遺伝子であるHLA-DRB1についてSS-SBT法を実施するためには, HLA-DRB亜領域に存在する5種類の構造多型がPCRプライマーの設計の際に問題となる. そこで本研究では, HLA-DRB1遺伝子のエクソン2からエクソン6について, 血清学的グループ特異的に増幅させるPCR系を開発し, このPCR産物の次世代シークエンシングにより, HLA-DRB1についてambiguityを排除した8桁レベルの超高解像度DNAタイピング(SS-SBT)法を開発することを試みた. その結果, 従来法では単一のアリル判定が困難な19検体について次世代シークエンサーを用いたDNAタイピングを行ったところ, 2つのアリルを除き, 全ての検体について8桁レベルのHLA-DRB1アリルが判定された. また, この過程にて5種類の新規HLA-DRB1アリルが検出され, それらのうちの1種類はエクソン4に非同義置換を伴うものであった. したがって, 本法はambiguityの認められない8桁レベルの単一のアリルまで判定が可能なHLA-DRB1タイピングに有効であるとともに, 新規HLA-DRB1アリルやnullアリルを効率よく検出するための優れた手法であることが示唆された.

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© 2012 日本組織適合性学会
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