2018 年 25 巻 1 号 p. 50-55
移植臓器の内皮細胞に発現するHLAを直接認識する,レシピエントT細胞のアロ応答について近年注目が集まっている。これまで,アロ抗体の種類によって,移植成績が異なることから,免疫順応(移植臓器に対する抗体が存在するにもかかわらず,その機能が保たれている状態)という概念が提唱されている。この免疫順応と内皮細胞とのアロ応答の関連性については,いまだ不明な点が多い。最近我々の研究室では,異なるアロ抗体存在下では内皮細胞HLA-DRに対するCD4 T-細胞応答が異なることを明らかとした。HLA-DR応答性CD4 T細胞はメモリー型であり,特にTh17とTfhは強く反応した。シングル細胞解析より,HLA-DRに強く反応する最も高い頻度を示したTCRα/βを所持するT細胞クローンは,細胞増殖が最も亢進した画分で多く存在していた。そのCD4 T細胞増殖は,anti-A/B抗体存在下で減弱した。IFNγの存在に関わらずanti-A抗体接着時に,CD275(PD-L1)が上昇しており,anti-A/B抗体接着で内皮細胞での発現上昇がみられ,ABO不適合腎組織において高値であった。本総説では,この研究に加え,最近の内皮細胞HLA-応答性CD4 T細胞に関する研究について述べる。