2019 年 26 巻 2 号 p. 95-104
近年のHLA抗体検査は蛍光ビーズ法が主流となり,多くの移植・輸血医療関連施設で採用されている。蛍光ビーズ法を用いたHLA抗体の測定は,抗ヒトIgGの補正蛍光値(nMFI)を指標に判定評価されるため,利便性の高さから臨床側に受け入れられてきた。しかしながら,蛍光ビーズ試薬の特性の理解や臨床評価の検証が進み,この手法が患者の病態を適確に反映しているか疑問視する報告も増えてきた。HLA抗体は,複数のエピトープに対して複雑な特異性を示し,IgG,IgM,補体結合性など様々な性状が混在する。判定基準を正しく設定しその結果を適切に解釈するには,(1)試薬の特性を正しく理解し,(2)患者が受ける医療に適した評価を導き,(3)検査精度を適正に管理することが重要と考える。本稿では,蛍光ビーズ試薬の判定基準(カットオフ)設定方法を例示し,その妥当性を検証した。混合パネル型のスクリーニング試薬では妥当性が認められた。一方,単一抗原型の試薬を用いた確認試験では,エピトープ解析との関係から特定のnMFI値でカットオフを設定することに困難な面があることが認められた。結果の解釈では,交差反応性グループとエピトープ解析の対比,HLA抗体の多様性,HLA抗体の性状から見た臨床上の重要性について解説する。HLA抗体検査の判定基準と結果を解釈する上での考え方を示して,今後の取り組みのヒントになることを期待したい。