2020 年 27 巻 2 号 p. 53-58
現在のパプア集団の祖先は,出アフリカ後,約4.7万年前にオセアニアに到達し,長い時間をかけてオセアニアの環境に適応してきたと考えられる。パプア集団(n=14)のゲノムに対し,正の自然選択が作用した6番染色体上の領域を探索したところ,HLA class II領域において強い自然選択を最近まで受けていたことが示唆された。最も強い自然選択のシグナルを示したSNPはハプロタイプDRB1*15:01-DQA1*01:02-DQB1*06:02と連鎖不平衡にあった。このハプロタイプは,メラネシア地域集団において高頻度に存在しており,地域特異的なアリル分布の形成に正の自然選択が寄与していることが示唆された。