2021 年 28 巻 2 号 p. 102-110
HLA-G(Human leukocyte antigen G)遺伝子は古典的HLA遺伝子と比較して多型性に乏しく,局所的な細胞に発現を示すことから非古典的HLAクラスI遺伝子の一つに分類されている。この遺伝子より発現するHLA-G分子は,免疫寛容を誘導する免疫チェックポイント分子として,妊娠免疫,臓器移植の際の免疫応答の抑制,腫瘍やウイルスの宿主免疫系からの逃避,自己免疫疾患などに関与する。近年,HLA-G遺伝子の3’UTR(3’ untranslated region)に位置する14 bp(base pair)の挿入/欠失多型(rs66554220)やSNP(Single nucleotide polymorphism)(rs1063320)が急性移植片対宿主病の発症リスクや移植後の生存期間と関連することが報告されているが,それらの多型部位はHLAアレルの公的データベースであるIPD-IMGT/HLA(Immuno Polymorphism Database-International ImMunoGeneTics project/HLA)から公開されているアレル塩基配列の範囲に含まれていない。そこで筆者らは,それらの多型部位を含めたHLA-G遺伝子の多型性を明確にするために,プロモーター領域から3’UTRの多型部位までの遺伝子領域を含むHLA-G全遺伝子領域をロングリードシークエンサーにより再解析し,新たに22種類のHLA-Gアレルを日本人集団で決定した。本稿では,HLA-G遺伝子の構造,発現および多型性を概説すると共に,筆者らが決定したHLA-Gアレル塩基配列の特徴について紹介した。