日本組織適合性学会誌
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2021年度認定 HLA 検査技術者講習会テキスト
臓器移植のための免疫プロファイリングと免疫モニタリング
大段 秀樹
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2021 年 28 巻 2 号 p. 94-101

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抄録

画一的な免疫抑制療法では拒絶や感染症の発症リスクが懸念される免疫学的高リスク症例を,免疫機能分子のゲノム情報を基盤として抽出し,免疫モニタリングによって重点的に個別化免疫抑制療法を適用することが現実的である。そこで,臓器移植成績に関連する免疫関連分子の候補遺伝子多型を包括的に解析した。その中で,レシピエントのFcγR遺伝子FCGR2A(rs 1801274)[131 H/R]とFCGR3A(rs396991)[158 F/V]の一塩基多型(SNP)が,肝移植患者の敗血症及び腎移植患者の尿路感染症の発症と起因菌に有意に関連すること,そして,FOXP3プロモーター領域(rs3761547)[33499 A/G]のSNPが,肝移植レシピエントは,急性拒絶反応の治療として行われるステロイドパルス療法に感受性に関連することなどを報告して来た。危険因子を持つレシピエントに対し,必要最小限の免疫抑制療法を実践する目的で,carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester(CFSE)細胞質染色とマルチパラメーターフローサイトメトリーを応用したmixed lymphocyte reaction assayを施行し,免疫モニタリングに基づくfine tuningにより免疫抑制薬の投与量の最適化に努めている。

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© 2021 日本組織適合性学会
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