日本組織適合性学会誌
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シリーズ:血清学
HLA分子とそのエピトープ
丸屋 悦子
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1997 年 4 巻 1 号 p. 18-52

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抄録

近年のHLA学の進歩はめざましく, HLAの構造(1,2)とその機能の解明(3)および遺伝子構造の解析(4-9)と研究は進み, 生体内でHLAが関る機能の調節法へと研究は続いている. およそ20年前, HLA-DR抗原を検出できる抗体が経産婦血清中に存在し, typing用の抗血清として使用可能(10)であることが解った頃, 私はHLA−マフィアの一員となった. 当時HLAとは“どんな形?”, “生体にとってどんな役割を果しているのか?”また“医療の中でどれくらい重要なものであろう?など漠然と考えながらHLA抗血清探しに夢中になっていた. 血清の解析を進めれば進めるほど, 同種免疫により作られるHLA抗体の反応性の複雑さがわかり, “いったいこれらの複雑な抗体を作るHLA分子の抗原エピトープ(当時このような用語は理解していなかったが)は何?, ひとつの分子にいくつのエピトープが存在するのか?”について強い関心を持つようになった, そして抗体スクリーニング(年に2〜3回, 陽性血清の特異性の同定作業を行っていた)で検出される特異抗体の頻度は免疫原である抗原頻度が類似しているものであっても同程度の頻度ではない. “これは偶然の結果か?”このようにHLAは不思議なことで満ち溢れた世界であった. 第11回国際HLAワークショップが開催される頃には多くのHLA抗原のアミノ酸配列の解析も進み, その配列を比較することにより抗原特異的または抗原群特異的なエピトープ(11-14)の推定が可能になっていた. いちはやくこの種の仕事の準備をはじめていたのは, 血清学で有名なUCLA,Terasaki Lab. のDr,Park(15,16)であった. 図1に血清学的交差反応性を示すHLA-A locusおよびB locus抗原を示す. これはDr. Parkの長年に亘る血清解析結果より作成されたものである. 2本線で結ばれる抗原同士は強い交差反応性を示し, 1本線は交差反応性があることを示す. この図で示される交差反応性を示す抗原群は単一のエピトープを有するのであろうか?それとも単にそれぞれの抗原に対する抗体のたし算の結果であろうか?筆者もHLA-A9とA1に反応する抗体を検出し, この抗体がHLA-A9とAlの共通エピトープに対する抗体であることを吸収実験により確認(17)したことがあり, Multi-specific抗体のエピトープ(18)についても興味深かった. このようなバックグランドで, HLA−抗体のエピトープについてアメリカ(American Red Cross, Jerome H. Holland Lab. およびUCLA, Terasaki Lab.)で行った仕事をまとめて紹介する.

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© 1997 日本組織適合性学会
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