日本組織適合性学会誌
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シリーズ:異種のMHC
硬骨魚のMHC
野中 勝
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1999 年 5 巻 3 号 p. 156-162

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抄録

近年, MHCの系統発生学的な解析が分子レベルで進められた結果, クラスI,II,III遺伝子が連鎖して存在するという基本構造が, 哺乳類, 鳥類, 両生類を通じて良く保存されていることが明らかになった. それに対して, ゼブラフィッシュ, メダカをモデルに進められている硬骨魚類での解析では, この3領域が連鎖せずに別々の染色体に存在すること, ただしクラスIとその抗原提示に重要な役割を果たすTAP,LMPなどの遺伝子は連鎖していることが判明した. この結果はMHCの本来の役割がクラスI抗原提示システムの確立にあったことを示唆している. ヒトMHCは第6染色体短腕に存在する約4Mbにわたる領域で, 免疫応答を司る遺伝子, 何らかの形で免疫反応に関与する遺伝子, 及び免疫とは無関係な遺伝子等200以上の遺伝子から構成されている(1). MHCの遺伝子構成の意義と起源に関しては, 1)いくつかの遺伝子間の連鎖には生理的意義が存在し, その遺伝子構成は自然選択により出来上がった, 2)連鎖には生理的意義はなく, その遺伝子構成は偶然の産物である, 3)遺伝子構成は偶然の産物であるが, 連鎖には生理的意義がある, 等様々な解釈が存在する. 近年急速な進展をみせている哺乳類以外の脊椎動物における解析は, MHCの遺伝子構成にも脊椎動物の進化の歴史を通じて良く保存されている部分と, 大きく変化している部分とがあることを明らかにし, MHCの意義と起源を考えるうえでの有益な情報を提供している. ここでは硬骨魚類のMHCの遺伝子構成を哺乳類, 鳥類, 両生類のものと比較することにより, MHCの意義を系統発生学的に考察してみたい.

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© 1999 日本組織適合性学会
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