日本未病システム学会雑誌
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東洋型未病対策のためのQOL低下タイプ分類
パイロット研究
喜多 敏明
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2006 年 12 巻 2 号 p. 261-266

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抄録

緒言: わが国の医療と福祉の現状をみると, 健康診断事業とリンクした西洋型未病対策に関する研究と実践は盛んである。しかし, 西洋医学の検査を行っても異常を見出せず, 自覚症状で苦しんでいる東洋型未病者のQOL (生活の質) の向上と健康寿命の延伸を実現するための研究や実践は, 未だ十分なされていない。そこで, 漢方治療の受療者をQOL低下のパターンによってタイプ分類し, それぞれのタイプが東洋医学的にどのような特徴を有するのかを解析し, 今後の東洋型未病対策に活用する目的で, 本パイロット研究を行った。
方法: 対象は, 平成17年6月から平成18年6月までに千葉大学柏の葉診療所を受診した500例 (男性137例, 女性363例, 平均年齢57.0歳)。漢方治療の前に健康関連QOLと東洋医学的病態を評価した。健康関連QOLの測定にはSF-36 (MOS Short-Form 36-Item Health Survey) を用い, 東洋医学的病態の測定には寺澤の気血水スコアを用いた。SF-36の8つの下位尺度得点を算出し, 階層的クラスター解析 (最長距離法) の結果をもとに, 各クラスターの気血水病態の特徴を検討した。
成績: 解析データと樹形図から抽出された8つのクラスター (A-H) の特徴は以下のとおりであった。A (33例): 精神的健康度の著しい低下と気虚・気鬱・水滞の病態。B (35例): 日常役割機能 (身体) の低下と気虚・水滞の病態。C (34例): 日常役割機能 (精神)・社会生活機能の低下と気虚・〓血・水滞の病態。D (162例): 健常人と同程度のQOLで, 気血水の異常なし。E (68例): 心の健康・活力の低下と気血水の全般的異常。F (158例): 体の痛み・全体的健康感の軽度低下と気虚・〓血・水滞の病態。G (5例): 加齢に伴う身体的健康度の低下はあるが, 気血水の異常なし。H (5例): 身体的健康度の著しい低下と気血水の全般的異常。
考察: 本研究で得られたQOL低下のタイプ分類は, 東洋医学的な気血水の病態とも密接な関係を有することから, 東洋型未病に対するヘルスプロモーション・ツールとして適用できる可能性が示唆された。

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