日本微生物資源学会誌
Online ISSN : 2759-2006
Print ISSN : 1342-4041
原著論文
タイ産発酵食品由来乳酸菌およびStaphylococcus 属分離株の 環境ストレス耐性の特性
宮下 美香杉本 昌子鎌倉 由貴Pattaraporn YukphanWanchern Potacharoen中川 恭好鈴木 健一朗田中 尚人
著者情報
ジャーナル 認証あり

2016 年 32 巻 1 号 p. 13-24

詳細
抄録

タイ産発酵食品に由来する乳酸菌とStaphylococcus属分離株について,その資源としての特徴および有用性を評価するため,生育環境におけるストレス耐性を調べた結果,分離株は酸性域での生育に耐性をもつ株が多く,また高塩濃度や高アルカリ性,高温で生育可能な株が存在した.このうち酸耐性と高温耐性は乳酸菌の,アルカリ耐性と高塩濃度耐性はStaphylococcus属分離株の特徴が主に反映されていた.そこでタイの気候や発酵食品の特徴を考慮して収集した日本国内の発酵食品に由来する分離株と比較した結果,タイ産発酵食品に由来する乳酸菌は酸耐性を示す株の割合が日本の分離株に比べて顕著に高く,酸耐性と高温耐性の両方を併せもつ株はタイの分離株のみであった.また,酸性域からアルカリ域までの広いpH範囲に対する適応もタイ産発酵食品に由来する乳酸菌が優れていた.タイ産発酵食品に由来するStaphylococcus属分離株の特徴としたアルカリ耐性や高塩濃度耐性をもつ株は日本の同属の分離株にも見つかり,類似環境に生息するStaphylococcus属細菌には地域問わずこれらの耐性をもつ株が広く分布していると考えられた.タイと日本の乳酸菌とStaphylococcus属分離株の種の分布には特段共通性が認められず,これら種分布の違いが分離株の生育特性の違いに反映していると考えられた.しかし,酸耐性や高温耐性を示した分離株については,日本産発酵食品に由来する分離株と同じ乳酸菌種がタイ産発酵食品に由来する分離株にも含まれ,タイの分離株には加えて多数の種が存在した.さらにタイの分離株では同種の株でも耐性に多様性が見られる場合もあり,株レベルでの性質の多様さが確認された.したがって様々な素材から製造された多様性に富んだタイの発酵食品から得られた分離株は,ストレス環境に適応した耐性を示す,日本では得られない微生物資源であると考えられた.

著者関連情報
© 2016 日本微生物資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top