2025 年 41 巻 2 号 p. 65-74
日本の汽水湖である網走湖から分離したAnabaenopsis sp. NIES-4685の高品質完全長ゲノムをOxford Nanoporeシークエンス技術によって取得した.得られた配列は4.6Mbpの1本の環状ゲノムと12kbpの環状プラスミド様配列であった.ゲノム系統解析の結果,Anabaenopsis sp. NIES-4685は他の同属株と単系統群を形成し,この株の属同定の正しさを確認できた.本株のゲノムには抗浸透圧物質であるスクロースとトレハロースの合成に関与する遺伝子が含まれていたが,この結果は本株が汽水産であること,塩分耐性をもつことと一致する.本ゲノムからは,窒素固定に関与する遺伝子(nifDKH)やガス胞形成に関与する遺伝子(gvp)も見つかり,本属を定義する特徴と一致していた.また,本ゲノムからはUV体制を付与するマイコスポリン様アミノ酸合成に関与すると考えられる遺伝子も見つかった.意外なことに,本ゲノムからは,シアノトキシン等の多様な二次代謝産物を含むポリケタイドや非リボソーム型ポリペプチドを合成する酵素群は全く見つからなかった.今回報告する株とそのゲノムデータは,今後のAnabaenopsisおよびネンジュモ目の類縁種の生理生態学,毒性学,分類学の研究に有用であると考えられる.