2025 年 41 巻 2 号 p. 57-64
緑藻ボルボックス(Volvox)は世界各地から報告され,タイプ種V. globator L.を含む太い細胞質連絡をもつグループはボルボックス節(Volvox sect. Volvox)に所属する.今回,オーストラリア産のボルボックス節の培養株の分類学的調査を実施した.本株は1978年のテキサス大学オースチン校の修士論文で使用され,種が未同定のまま継代培養で保持されていたものである.培養株は無性群体(多細胞球体)を形成し,表面の2鞭毛性の非生殖細胞は鞭毛より太い細胞質連絡で連結し,球体前方の非生殖細胞は洋梨型であった.しかし,種レベルの分類に重要な有性生殖の群体(有性群体)は観察されなかった.分子系統解析の結果,本種は新規系統であり,核ITS2の2次構造で近縁種とは補償的塩基置換が認められたので新種の可能性も考えられた.しかし,上記修士論文によると本株の有性群体は卵と精子束を同時にもつ雌雄同体であり,接合子は250-400以上であり接合子壁は尖った刺をもつ.以上のような形態はこれまで遺伝子配列データのなかった南アフリカ産のV.amboensis M.F. Rich & Pocockと類似しており,今回のオーストラリア株はV. amboensisと同定し,国立環境研究所微生物系統保存施設からNIES-4534として公開した.