未来共創
Online ISSN : 2435-8010
論文
中国の被災コミュニティにおけるソー シャル・キャピタルの有効性の違い
都市コミュニティ、移行期コミュニティ、農村コミュニティの比較 に着目して
王 藝璇
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2024 年 11 巻 p. 25-56

詳細
抄録
災害対応において重要な概念であるソーシャル・キャピタル(SC)は、地域によりその有効性に違いがある。過去の研究は農村部と都市部のコミュニティに焦点を当ててきたが、中国のような急速な都市化が進む発展途上国では、新たな「移行期コミュニティ」が出現している。しかし、これまでの研究ではこれらのコミュニティの SC の役割に関する検討が不足している。本研究では、質的なアプローチを用いて、中国河南省の洪水被災地域を研究対象とし、都市、移行期、農村の 3 つのコミュニティで SC の有効性の違いを調査した。分析結果により、災害直後、全てのコミュニティで結束型SC が重要であったが、時間とともにリンク型 SC の効果が見られた。また、SC の有効性はコミュニティの種類により違う。都市コミュニティは地理的に有利な位置にあるため、外部からの援助をより多く受けることが可能であるが、結束型 SC が災害後希薄化する傾向がある。移行期コミュニティの管理が混乱し、住民関係が分断されているため、SC の有効性は低い。農村コミュニティは内部的な繋がりが密接であり、結束型 SC と地元政府のリンク型 SC が機能したが、辺鄙な場所に位置し、交通が不便であるため、外部からの支援を受ける機会が少ないという課題がある。
著者関連情報
© 2024 本論文著者
前の記事 次の記事
feedback
Top