2010 年 28 巻 5 号 p. 371-380
本稿では,相互情報量(mutual information: MI)による画質評価法を,ノイズ低減策としてwaveletしきい値処理を施したPlanar画像に応用し,最適な画質改善をもたらすwavelet基底関数の選択手法を提案する.MI値は画質改善効果が大きいほど高くなる.最初に既存のwavelet基底関数を8種類,候補にあげる.次に原画像に対しuniversalしきい値法を用いてwavelet縮退によるノイズ低減を施す.最後に逆wavelet変換後画像のMIを計算する.実験に用いる画像は,コンピュータ上で作成する2次元grid pattern像とインクジェットプリンタにより作成する面線源ファントム像である.両種類の画像実験の結果は同じ傾向であり,基底関数にdmey waveletを用いた際のMI値がもっとも高い.また,実験結果による提案手法の妥当性を検証するために,画像の標準偏差率とエッジ傾斜比を求め,これらの指標間の比較を行う.これらの結果から,MIによるwavelet基底関数の選択が有効な手法であること,そして低コントラストのplanar画像に最適な基底関数はdmeyであることが示された.