本稿では,脳PET画像より得られる組織時間放射能曲線(tTAC)のノイズを除去する手法を提案する.tTACは神経受容体の全分布体積(
VT)を推定する線形手法などのさまざまな受容体解析法に利用されるが,PET撮影時に加わるノイズは推定精度を低下させる.そこで,本稿ではtTACのパラメトリック固有空間に基づいて計測したtTACのノイズを除去する手法を提案する.tTACの形状はコンパートメントモデルと呼ばれる脳内におけるリガンドの挙動を表すモデルに基づき表現できる.提案法は,モデルが含む未知のパラメータを変化させつつシミュレーションすることによりtTACの固有空間を構築し,この固有空間とtTACに加わるノイズのモデルに基づきtTACの真値をMAP推定する.シミュレーションおよび臨床画像においてノイズ除去性能の評価を行った.ノイズ除去後の
VT推定では,ノイズ除去前に比べ推定バイアスおよび推定分散が小さくなった.この結果,提案法はノイズ除去効果が期待できることが示された.
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