肝臓は個人においてもその大きさ,形状および脈管分布においてバリエーションが広く,手術対象患者の肝臓に対応した手術支援は重要な課題である.本論文では手術対象となる特定患者の腹部 CT画像を用いてその患者に特化した肝臓情報を用いて擬似手術環境を再現することができる手術支援システムを構築する.提案するシステムは大きく 3つのプロセス,(1)画像処理技術による肝臓領域分割とその内部脈管分布の半自動抽出,(2)コンピュータビジョン技術による対象患者の肝臓三次元可視化による擬似手術環境構築,(3)構築された擬似手術環境上で仮想メス操作による対話的かつ直感的な切離ラインの再現によって開発する.本研究で構築したシステムの有効性を確認するため,臨床外科医が実際の症例にもとづいて本システム上で対話的に仮想肝臓内を侵襲しながら切離ラインを設定するシミュレーションを行った.本システム上で操作を行った臨床医に対しシミュレーション評価を客観評価および主観評価を行ったところ,事前の手術支援として有効なシステムであると評価を得た.