抄録
胸水貯留は,心不全,肝硬変,肺炎,がんなどさまざまな原因により発生する.その増加した胸水や気胸などの胸腔内の占拠性病変が,気管支を圧迫するとその末梢部分は無気肺となる.胸水,無気肺とも呼吸困難などを引き起こす可能性があり,無気肺は肺炎などを併発するため早期の治療が必要となる.従来の単純X線画像による診断では,隣接する胸水部と圧迫性無気肺領域の識別は非常に困難であった.本研究では,胸部の造影CT画像を用いて胸水領域と圧迫性無気肺領域の分離を行い,半自動処理にて個別に容積を計測する手法を提案する.定量化を行うことで病状の進行度や治療の経過を数値的に判断することが可能となる.肺空気層領域の抽出,肋骨情報からの肺輪郭検出,心臓領域の除去を行い無気肺領域と胸水領域のみを抽出し画像を精査して特定部位の体積を計測する.実患者のデータを用いて検証を行った結果,本手法での特定部位の定量測定が有効であることが示唆された.