肺野内部の運動を支配する運動パターンの数を複雑性と定義すると,COPD(chronic obstructive pulmonary disease,慢性閉塞性肺疾患)患者の間で多様な状況が現れるが,病期と複雑性の間に明確な対応はみられないことが知られている.一方,LAA%(肺野内部の低吸収領域の面積比)は,1秒率(努力肺活量の最初の1秒間の割合)などの呼吸機能の指標と相関することが報告されているが,COPDの多様性をスタティックな指標のみで説明できるとは考えにくい.本研究では,LAA%と肺野内部の運動を表すダイナミックな指標を組み合わせることで,呼吸機能の指標として重要な1秒率とCOPDのもつ多様性を説明できるかどうか検討する.ここでは,健常者5名,COPD患者24名(I期4名,II 期10名,III期8名,IV期2名)に対し,息止め時のCT画像と深呼吸時の時系列MRIを撮像した.MR画像に対しては,亜区域枝レベルまでの肺動静脈の動きを追跡し,肺野全体と上葉,中葉,下葉ごとに基本の運動パターンを求めた.これらを利用して肺葉内の評価点の平均二乗変位や平均走査面積など4種類の運動指標を求め,さらに,これらの運動指標とCT画像から求めたLAA%を説明変数,1秒率を目的変数として,重回帰分析を行った.この結果,運動の分散が1秒率にLAA%と同等の相関を示すこと,両者の組み合わせは1秒率との相関を高めることがわかった.
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