抄録
MRI画像シミュレータは,パルスシーケンスやハードウェア開発の効率向上に有用である.しかし,拡散強調画像に関しては計算量が膨大なため,ヒト脳サイズモデルを扱えるシミュレータは報告されていなかった.われわれは新規に提案した高速法を適用することで,年単位の計算時間を数時間にまで短縮した.一方で,シミュレータに対する性能向上への要求は高まる傾向にあり,計算時間の増大を招いている.そこでさらなる高速法として圧縮センシングをシミュレータに応用することを提案する.検討結果によれば,約30%のデータからでもシミュレータとしての動作に耐えられることが推定され,約3倍の高速化が見込まれた.応用例として,拡散強調画像撮像用MPGの振幅変動を想定し,得られる画像を評価した.その結果,データ利用率30%の圧縮センシングでも,MPGの振幅変動と画質劣化との関係を再現でき,開発したシミュレータが装置開発に有用であることが確認できた.