抄録
歯科パノラマX線写真における下顎皮質骨の変化は,骨粗鬆症をスクリーニングする指標として注目されている.われわれは,これまでに下顎皮質骨の厚みを自動計測する手法を提案した.しかし,骨密度の低下により下顎皮質骨に線状の骨吸収像(線状構造)が現れる場合,既存手法では正確な厚みを計測できなかった.本研究では,線状構造抽出法を用いて,下顎皮質骨の密な部分のみを自動計測し,骨粗鬆症の可能性を示す手法を提案する.線状構造抽出には,濃度勾配に基づき線を抽出する手法を用いた.提案手法を,朝日大学で撮影された,異常症例26症例を含む100症例に適用し,診断能を検討した.これらの診断は骨塩定量検査に基づいている.また,7つの歯科クリニックで撮影された,歯科放射線科医による骨粗鬆症疑いの所見をもつ21症例を含む458症例に対しても性能の検討を行った.その結果,前者は感度80.8%,特異度94.6%であり,後者では感度90.5%,特異度79.2%であった.よって,提案手法は歯科診療を通した骨粗鬆症の早期発見に有用であり,さらに異なる撮影環境下における汎用性を有することを示唆した.