抄録
アルツハイマー型認知症の発症の本質的な過程に直結した代理マーカー策定のための大規模な多施設臨床研究(ADNI)が,2004年より米国で発足した.これは臨床・心理・画像・生化学などの多様な検査を6か月間隔で2年ないし3年間行い,アルツハイマー型認知症の進行動態を正確にかつ客観的に評価する方法を策定する試みである.特に,MRIなど脳画像を用いて疾患による構造変化を捉える手法は,高い客観性と再現性をもつ代理マーカーになり得るとされている.しかしMRIは,用いる装置や撮像プロトコルに依存して画像の品質が異なるため,縦断的解析には一貫した撮像装置とプロトコルを用いる必要がある.また,MRIは撮像原理に起因する画像ひずみや信号不均一性の問題があるため,事前の補正が不可欠である.ADNIの成果によるデータベース公開は,過去に報告された脳画像解析法を用いた再現実験を可能にし,縦断的解析に内在する問題を明らかにした.縦断的脳画像解析では,画像変換の際の対称性や容積変化量における推移性を担保したアルゴリズムを用いることが重要である.