2017 年 35 巻 1 号 p. 43-50
眼底の血管は体外から唯一直接観察できる血管であることから,眼底検査は集団検診や人間ドックで高血圧症や動脈硬化症などの早期発見のために利用されている.近年の受診者数の増加によって医師の読影の負担が増しており,その負担を軽減するためにコンピュータ支援診断(CAD)の研究開発が行われている.眼底画像の血管抽出はCADシステムにおける基本要素のひとつである.本稿では,モルフォロジーフィルタバンクとAdaBoostを組み合わせた血管抽出法を提案する.モルフォロジーフィルタバンクは眼底画像から血管の初期候補である線状成分を抽出するために用いる.また,AdaBoostはモルフォロジーフィルタバンクによって得た画像から偽陽性を減らすために用いる.DRIVEデータベースを用いて提案手法の評価を行ったところ,感度は0.7362,特異度は0.9714であった.提案手法は,眼底画像における血管抽出法として有用である.