2017 年 35 巻 5 号 p. 257-267
同一患者を異なる時点で撮像した三次元断層画像を変形位置合わせし,その経時差分画像を生成・提示する技術がある.この技術は病変等の経時変化の可視化に有効であり,医師の読影の支援技術として期待されている.しかし,実臨床で広く利用されているスライス厚が厚い画像(thick-slice画像)の経時差分では,たとえ正確な位置合わせが実施されたとしても,単純な差分処理ではパーシャルボリューム効果に起因するアーチファクトにより差分画像の視認性が低下する.本稿では,thick-slice CT画像を対象に,その差分画像に特有のアーチファクトを低減する差分手法を提案する.提案手法は,スライス厚に応じて画像間の離散化位置のずれを考慮した差分処理を行うことで,アーチファクトを低減する.本稿では,人工画像を用いた定量評価実験と,臨床画像を用いた医師の主観評価実験を行い,従来手法と比べた提案手法の有用性を示す.