2022 年 40 巻 2 号 p. 48-58
放射線皮膚炎の評価は,臨床で用いる有害事象共通用語規準(Common Terminology Criteria for Adverse Events: CTCAE)に基づき,軽度のグレード1から有害事象による死亡のグレード5まで5段階に分類される.しかし,視覚的な評価に基づいているため,個人の経験や知識に左右されるといった課題がある.筆者らは,学習に用いる症例数が少ない課題に対処するため,人工症例画像を生成し,深層学習を用いた放射線皮膚炎のグレード判定システムを構築してきた.本研究では,近年提案されたEfficientNetモデルを用いた新たな放射線皮膚炎のグレード判定システムを作成した.また,評価者のグレード判定に相違が生じた画像に,ベイズ推定に基づく最終的な分類を行った手法について述べる.EfficientNet-B0~B7を用いて画像解像度とデータ拡張法の条件を変えた学習モデルは,86.4%の正答率であった.また,グレード判定に相違が生じた画像について,複数のEfficientNetモデルにより最終グレード判定を行った.ベイズの定理に基づく最大事後確率推定法(ベイズ推定)を用いた評価実験により,提案手法の有効性を確認した.