2019 年 11 巻 2 号 p. 25-43
本研究は,管理会計が水平的インタラクションの創発を促進するべく設計されていない状況下では,管理会計の利用が水平的インタラクションの創発にいかなる形で影響を与えるのかを明らかにしている。独自に支援の概念を援用し,水平的インタラクションを再解釈した。研究対象として直接部門⇔間接部門の水平的インタラクションを選択し,間接部門による能動的支援の創発に着目した。また,ジョブローテーションならびに管理会計の共通基盤としての利用を事例の分析視座として採用している。結論として,管理会計が水平的インタラクションの創発を促進するべく設計されていない状況下では,ジョブローテーションという部門横断的な知識・情報共有の機会と情報インフラとしての管理会計を相補的に利用することで,間接部門が能動的支援を創発する可能性があることが明らかとなった。本研究のインプリケーションは,管理会計が水平的インタラクションの創発を促進するべく設計されていない状況下における管理会計の新たな役割を示したこと,支援という切り口から水平的インタラクションの解釈を拡張したことがあげられる。