抄録
本研究では,従業員による逆淘汰の事例として予算スラックの形成に着目し,それを削減する企業内環境観察システムの提案を行う。すなわち,粗雑なシグナルを発するシステムと精緻なシグナルを発するシステムの比較検討を行う。実験室実験の結果,粗雑なシグナルを発するシステムが従業員の報告により強く影響を与え,シグナルの上限を超える報告に対して管理者が拒否する傾向が強かった。つまり,粗雑な情報を発する企業内環境観察システムと,その許容範囲を逸脱する従業員報告に対する管理者の拒否権との併用が,経営管理ツールとして優れている可能性がある。