ステイクホルダー・エンゲージメントのCSR経営に与える影響

ステイクホルダーの重要性の視点から

抄録

企業は自社の正統性を獲得するために，多様なステイクホルダーの要請に応えることが求められるが，他方で全てのステイクホルダーの要請に平等に応えることはできない。本研究はステイクホルダーの重要性とエンゲージメントの関係性に焦点を当て，Mitchell et al.（1997）によるステイクホルダーの重要性の視点から，なぜ企業が特定のステイクホルダーとエンゲージメントを行い，それがCSR経営にどのように反映されるかを観察することを目的にし，ケーススタディを用いて考察する。本研究では，事例企業がエンゲージメントを実施する機関投資家の重要性は，社内外の多様な要因の関係の中で高まったことがわかった。またステイクホルダーの重要性を構成する権力，正統性，緊急性と近接性の4つの属性は可変的かつ相互に関連するものであり，社会的に構築されることを示している。さらに機関投資家の重要性の高まりの中で，彼らとのエンゲージメントがCSRマネジメントの体制の構築に貢献することを示唆している。