抄録
本稿ではサラヤ株式会社における事例研究を通じて,持続可能性経営のためのマネジメント・コントロール(MC)の役割を明らかにすることを目的とする。特に,同社の持続可能性経営から見られた,MCの仕組みとして人事によるコントロールとコミュニケーション・ツールの役割に焦点をあてる。事例分析から,これらのMCは外部環境と企業組織の相互作用を通じた持続可能性の事業活動への統合,および持続可能性活動に従事する従業員の活動を組織的な営みに展開するプロセスの中で,相互補完的に役割を果たしていることが明らかになった。本稿からの発見は,持続可能性経営のためのMCに関する学術的研究と実務の両方において貢献ができるものと考えられる。