抄録
マネジメントコントロールシステム(MCS)は,経営目的を達成するために利用されている情報ベースの仕組みであり,管理会計システムに基づく会計コントロールはその中軸に位置し,経営理念を基礎とした理念コントロールや人間関係に基づく社会コントロールとともに組織の行動パターンに影響を及ぼしていると考えられる。本研究では,日本企業におけるMCS の利用実態を明らかにするためにサーベイ調査を実施し,組織文化によってMCS がどのように組み合わされて利用されているのか,MCS が組織成員の心理的状態に及ぼす影響を手がかりにその実態を分析した。分析の結果,組織文化の違いによって,組織成員の心理的状態や企業業績に影響を及ぼしているMCS の組み合わせが異なることが明らかになった。具体的には,柔軟性を重視する組織文化を有する企業群では,理念コントロールや社会コントロールの役割が大きく,安定や統制を重視する組織文化を持つ企業群では,理念コントロールや社会コントロールに加えて会計コントロールも重要であることが示された。