抄録
本研究は, 熱分解やその他の測定の解析を通じてABS, PC/ABSの 難燃性について検討を行った. その結果, ABSで はハロゲン系難燃剤が有効であった. これは主要な分解生成物がスチレンであり, ABS中のポリスチレンのマトリックスが分解して生じたことにより, ポリスチレンに有効な難燃剤が良い結果をもたらしたためである. 一方, PC/ABSで はリン系と金属-有機錯体が優れた結果を与えた. リン化合物と錯体を添加することによって燃焼時の総発熱量も少なくなったが, これは燃焼時に表面に炭化層が形成されたことによる. たとえばPC/ABSでは, TCP/Fe(acac)3が もっとも良い結果を与え, 約10秒で消炎した. ポリマーアロイの燃焼性は二つの要因が支配する. 第一に燃焼を促進する主要な分解生成物の寄与が大きいこと, 第二に高分子表面の炭化層が抑制する効果である. 従って, 主要な分解生成物の発生を抑制すること, アロイの中に含まれる炭化層を形成する成分を炭化させる触媒を加えることが燃焼を抑制するのに重要である.