本研究では,天然系色素であるモナスカスカラー色素で着色した生分解性高分子シートの退色過程を調べ,天然系紫外線吸収物質であるケルセチンを添加することにより退色の抑制を試みた.また,芳香族環を含む共役系のモナスカスカラー色素の劣化機構を分子軌道法により推定した.モナスカスカラー色素で着色した生分解性高分子は,紫外線暴露環境下において著しく退色したが,ケルセチンを0.5%添加することで既存の紫外線吸収剤よりも高い退色抑制効果が認められた.モナスカスカラー色素は,光劣化により,加水分解によるラクトンの開環,二重結合の水和反応および二重結合の酸化開裂によるカルボニル基の生成反応が起こると考えられる.