2017 年 29 巻 3 号 p. 75-85
温水用ポリエチレン管は使用用途により給湯用と暖房用に大別されるが,いずれも管内を温水が長時間流れるために,耐クリープき裂成長抵抗性に優れた分子構造を有する樹脂が使用されている.更に,高温環境下で酸化劣化しにくいように,各種の抗酸化剤が多く配合されている.本研究では,2種類のポリシランと造核剤を添加したポリエチレン管を試作し,熱間内圧クリープ試験や連続通湯試験を実施した.その結果,原料メーカで添加された標準配合のポリエチレン管と比較して,2種類のポリシランを添加したポリエチレン管は両試験にて共に,破断までの時間が長くなることがわかった.また,結晶核剤を添加したポリエチレン管は標準配合の破断までの時間とほぼ同等であった.破断部位の詳細な観察により,ポリシランを添加すると,同じ経過時間で管内面の変色劣化層の大きさが小さいことがわかった.また,FT-IRやEPMAの分析結果から,添加したポリシランが管内面に析出して,温水中の銅等の金属酸化物を固定化させ,樹脂内への銅イオンの侵入が抑えられていることで変色劣化層の生成,微細なき裂の生成や成長が遅延することがわかった.