北陸先端科学技術大学院大学では,多くの新製品・新事業の「種」を同時に創生し,イノベーションの創出につながる「場」として,野中や中森らによる理論を発展させた「Matching HUB」というシステムを企業や大学のような組織の外にデザインし,毎年開催している.本論文では,「Matching HUB」が有効に機能するメカニズムの検討を「Knowledge Reactor」という新たなコンセプトのもとに行い,化学反応容器である「Chemical Reactor」との間に多くの共通点を見出すことができた.それにより,従来,化学反応の理解に用いられてきた考え方や方法論を適用することができ,ニーズとシーズの効果的なマッチングには「Matching HUB」のような限定された「場」が必要であること,University Research Administrator(URA)が単なるコーディネータではなく,的確な分子同士の反応(マッチング)を促進するような触媒としての機能を有することなどが明らかとなり,「Matching HUB」やURAの有効性をより高めるための要素についての重要な知見を得ることができた.