2020 年 32 巻 2 号 p. 40-45
ポリプロピレン樹脂は,靱性,柔軟性,軽量性,耐熱性等の優れた特性から,自動車部品等に使用されている.一般的なポリプロピレン樹脂には酸化防止剤が添加されているが,熱酸化条件下での使用に伴いこれが減少し,最終的にポリプロピレンの構造変化が起こることで樹脂の物性が変化すると考えられている.化学発光測定は,迅速・簡便に樹脂の酸化劣化を捉えられる手法として注目されており,ポリプロピレン樹脂においてもいくつかの報告例があるが,更なる知見の集積が求められている.今回我々はこれまでに報告のなかった,フェノール系,リン系および硫黄系の酸化防止剤を組み合わせて添加されたポリプロピレン樹脂の,酸素雰囲気下150°Cでの化学発光測定を実施した.また,大気雰囲気下150°Cで加熱したポリプロピレン樹脂中の酸化防止剤残量の分析を別途行った.これにより,複数種類の酸化防止剤減少と化学発光の関係について検討した.