抄録
フレキシブルプリント配線基板 (FPC) に直流電圧を印加した際に, 接着剤中に経時的に発生する銅のイオンマイグレーションが絶縁信頼性を著しく低下させることはよく知られている.本研究では, NBR/エポキシ樹脂系接着剤を用いたFPCについて高温高湿環境下で加速寿命試験を行い, 直流電圧を印加しながら絶縁抵抗を計測することにより, 接着剤内部に発生する銅マイグレーションについて検討した.その結果, 接着剤中に相分離構造を形成するNBRドメイン中にはSO42-等のアニオン量がマトリックスに比べ多く存在する為, 陽極より溶出した銅イオンは最終的に酸化銅となってこのNBR中に選択的に析出していることがわかった.また, NBR中で析出することなく陰極に至った銅イオンは還元されデンドライトとなって析出するが, 光学顕微鏡下でその析出がみられた時点で両極間の絶縁抵抗が著しく低下する現象が確認された.